ヒロおじさんの話
ヒロおじさんは、母方の祖母の弟です。
ですので、私の叔父ではなく、母の叔父にあたりますが、
「ヒロおじさん」と呼んでいました。
ヒロおじさんや、祖母の家族は、所沢の山の方に住んでいました。
そこでは当時、かなり有名な一家で、大きな土地や家を持っていました。
ヒロおじさんも戦争にいきました。
シベリアです。
戦時中、長い間、ヒロおじさんから連絡はなく、家族は心配していました。
なかば、あきらめてもいました。
そんなある日、祖母が庭の方に目をやると、
遠くにある一本の大きな木の下に、
軍服を着た男性が立っていました。
その男性は、ただじっと、目の前の大きな木を見上げています。
祖母は、その男性に近づきました。
そして、その男性は、ヒロおじさんでした。
帰国後、ヒロおじさんは結婚し、自宅に大きなダンスホールを作り、
夫婦でホールダンスの先生をしていました。
私も子供の頃に、何度か遊びに行って、大きなダンスホールで踊りました。
おしまい。
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以下、私の感想です。
帰国したヒロおじさんは、なぜ自分の家へすぐに向かわず、木をじっと見上げていたのでしょうか。
この話をしてくれた叔母は、きっとヒロおじさんはその木を見つめることで、故郷に帰ってきたということを実感していたのだろうと言っていました。
私は、ヒロおじさんが、戦争に行く前に比べ、
大きくなった木を見て、戦争で奪われた長い時間を感じていたのかもしれないと
思いました。